損害賠償について

損害賠償ってどんなもの?

Q

交通事故の被害者はどのような補償をしてもらえるのですか。

A

人身事故、物損事故それぞれについて、以下のような補償があります。

■ 人身事故の場合

治療費

治療に際して必要になる実費を指します。入院費や手術料、診察料などのすべてを指します(こちらを参照)。

入院雑費

入院を余儀なくされた場合に請求することができる費用です。本来の趣旨は、入院中の新聞購読費や卵、牛乳などの栄養補助食品、ガーゼ等の衛生用品などの購入に必要な実費ということです。賠償実務としては、日額いくら、というような損害算定がなされます(こちらを参照)。

付添看護

看護費用は入院看護と通院看護に大きく分けられます。しかし、ともに認められにくいものです(こちらを参照)。

通院交通費

文字どおり通院に要した実費です。普通は公共の交通機関を利用した場合の交通費であり、マイカーを利用した場合はガソリン代となります(こちらを参照)。

休業損害

原則的には、事故の負傷のため就労ができず、収入を得ることができなかった場合を想定しています(こちらを参照)。会社員の場合こちら。自営業者の場合こちら。専業主婦の場合こちら。会社役員の場合こちら

慰謝料

事故による負傷の痛みなど、肉体的、精神的苦痛を慰謝するものが慰謝料にあたります。後遺障害の残存した場合、死亡の場合などは、傷害慰謝料とは別に計算をされます(こちらを参照)。

死亡・後遺障害慰謝料

これも傷害の慰謝料に同じく、人の死亡や後遺障害を慰謝するためのものです。

逸失利益

死亡事故の場合や後遺障害が残存してしまった場合に、本来得ることができたであろう収入を計算して請求するものです(こちらを参照)。

将来の介護料

後遺障害1級、2級、3級のケースで、四肢の不自由や精神神経に著しい支障を残してしまい、日常生活を独力でおこなうことができない場合に算定、請求をします。

葬儀費用

死亡事故の場合に対象になります。しかし全額認定されるようなケースはほとんどありません(こちらを参照)。

その他

たとえば装具の費用(こちらを参照)、旅行のキャンセル費用や、通勤のための交通費などです。

■ 物損事故の場合

修理費

これはその通り、自動車の修理費用です。修理の可否を判断する、全損、分損という判断もこの段階でおこないます(こちらを参照)。

レッカー代

これは、事故の現場で走行不能に陥った場合、最寄りの修理工場へ搬送するための実費です。

代車代(レンタカー代)

事故の修理に際して使用不能の損害を請求します。実際にレンタカーを要した場合にはその実費になります。必要性、妥当性などが厳格に求められます。

格落ち損害

俗に査定落ち、などとも呼ばれます。現実の損害として立証するには難しいものがありますが、いわゆる事故のために買い替えを将来する際にその評価額が落ちるので、その分を賠償請求するというものです(こちらを参照)。

Q

慰謝料って何ですか。

A

交通事故により負ったけがに対して、その肉体的、精神的苦痛を慰謝するべきもので、それをあえて金銭に換算したものです(こちらを参照)。

慰謝料の考え方には、けがに対する慰謝料、後遺障害に対する慰謝料、死亡に対する慰謝料というように考え方が分けられます。

日本における損害賠償の考え方では、よほど特別な事情がない限り、慰謝料請求ができるのは人身事故の場合に限られます。

Q

逸失利益って何ですか。

A

その事故がなければ得られたであろう収入のことです(こちらを参照)。

逸失利益には、後遺障害によるものと死亡によるものがあります。後遺障害が残ると、事故前と同じように働けなくなる場合があります。その結果、収入が減ることが考えられます。つまり、後遺障害がなければ得られたであろう収入が失われたことになります。また、事故によって死亡すれば、死亡しなければ得られたであろう収入が失われたということになります。交通事故で亡くならなければ得られたであろう利益を逸してしまったのですから、その損害を逸失利益といいます。

後遺障害の場合、死亡の場合、それぞれその損害の計算方法には定められた計算方式があります。また後遺障害の等級についても自賠責保険において定めがあり、それぞれの等級の要件や労働能力喪失率などが定められています(規定は労働者災害補償保険の規定に準拠しています→後遺障害別等級表)

Q

休業損害って何ですか。

A

原則的には、事故の負傷のため就労ができず、収入を得ることができなかった場合を想定している補償です(こちらを参照)。

ゆえに会社員で休業はしたが給料は全額もらったような場合は請求できるものはありません(有給消化は別です)(こちらを参照)。

自営業者の場合、事故前年度の確定申告書をもとに、「利益(売り上げではありません)」を365日で除して日額を算出します。現実の休業日数が原則ですが、その証明が難しいのも事実です(こちらを参照)。

専業主婦でも、家事は重労働でもあるため、現実的に金銭の支給を得ているわけではありませんが、損害賠償の算出においては理論上の数値を採用しようという発想から、広く認められる傾向にあります(こちらを参照)。

しかし会社役員だけは、一般の労働者とは違い、経営をおこなうことにより報酬を得るものであり、労働の対価として賃金を得るということではないため、損害の認定はされにくい傾向にあります(こちらを参照)。しかし現実には小規模な法人であれば、会社経営だけを行っている役員は少なく、現実に自分も営業に走り回っている人もいるでしょう。ケースバイケースですが、同じような仕事をしている他の従業員がもらっている賃金を目安に休業損害を算出して請求するという方法になるでしょう。賃金センサスなども参考にします。

Q

損害賠償請求権に時効はあるのですか。

A

通常は3年間で、時効により権利は消滅します。

この点は民法に不法行為による損害賠償の請求権は被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから3年間行使しないときは時効によって消滅する(民法724条)と規定されています。これはひき逃げなどで加害者が知れないときなどの特殊な場合を除いては、通常は事故発生日より3年間経過した時に時効になると理解されます。

ただし、事故による負傷の治療が長期間を要するような場合で、3年間経っても治癒もしくは症状が固定していないような場合には、この消滅時効にはあたらないものと考えられます。とはいっても、事故後、加害者側とまったく連絡をとっていないような、いわゆる請求する意思をまったく示していなかったような場合には、加害者側から時効による請求権の消滅の主張をされてしまう恐れがあります。時効に関しては注意が必要です。

ちなみに、自賠責保険の時効は2年です。自賠責保険には、加害者請求(15条請求)という方法と、被害者請求(16条請求)という方法がありますが、加害者請求の場合には加害者が賠償金を支払ってから2年、被害者請求の場合には事故発生から2年ということになります。

Q

適正な賠償を受けるにはどうしたらいいですか。

A

損害を証明できる立証資料を取り揃えて、示談、交通事故紛争処理センター、調停、裁判などの方法に訴えるということになりす。

積極的損害

Q

交通事故の治療には健康保険が使えないと聞きましたが。

A

大きな誤解です。交通事故の診療でもすべて健康保険が使えます。

交通事故の診療には健康保険が使えないという誤解があるのは事実です。たしかに病院の側からすれば、同じ治療行為で高い治療費を請求できるうえ、事務手続きも簡単なことから、交通事故の診療では、健康保険を使わない、いわゆる自由診療を行うところも少なくありません。

しかし、被害者とすれば、それでは治療費が保険診療の2〜3倍にも膨れ上がり、すぐに強制保険の傷害事故に支払われる保険金の限度額120万円を超えてしまうことになります。そうなれば、強制保険からは、支払いを受けられなくなってしまいます。また、被害者側にも過失がある場合には、治療費が高額になれば、その分自分の負担すべき金額も増えていきますので切実な問題になります。

交通事故による入院や診療が長引きそうであれば、まず保険診療に切り替えてもらうように病院と折衝することでしょう。また、病院側でも自由診療とはいえ、無秩序に請求を作成するわけではなく、近年では自賠責保険の診療報酬基準が作成され(一般に新基準と呼ばれています)、交通事故の場合にはその基準を使用する病院も増えているようです。そのあたりの治療費について、病院ときちんと話し合っておくことは重要です。

Q

事故の治療に健康保険を使用するメリットは何ですか。

A

被害者に過失がある場合は、健康保険を使えば金銭的に得!

Case 被害者にも過失(30%)があるような場合

治療費が自由診療で300万円(健康保険方式で1点単価20円として)休業損害が100万円、慰謝料が100万円だと仮定しましょう(数字はすべて架空です)。

この人の人身損害の総額は500万円になります。そして、この被害者にも過失があった場合を想定してみます。すると全体500万円から、30%相当分が控除されますので、差引きでは350万円を相手方から受け取ることになります。しかし病院の治療費は300万円ですから、手元に残ることになるのは50万円です。

これを、まったく同じ状態で健康保険を使用したとしましょう。治療期間が変わりませんので、休業損害と慰謝料は同じく100万円ずつになります。治療費は、まず健康保険を使用したことにより1点あたりの単価が10円になりますので、半分の150万円になります。そして、健康保険を使用した場合には患者本人負担分は、3割ですので、負担額は45万円になります。そうすると人身損害の総額は、245万円になります。被害者の過失分30%を控除すると、相手方から受け取る金額は171.5万円になります。治療費として病院に支払うのは45万円ですので、手元に残る金額は126.5万円になります。

 

人身損害の総額

治療費

休業損害

慰謝料

控除額

残額

自由診療

500万円

300万円

100万円

100万円

150万円

50万円

保険診療

245万円

45万円

100万円

100万円

73.5万円

126.5万円

この例で考えてもわかるように、被害者の手元に残る金額は、健康保険の使用、未使用で76.5万円も違ってくることがわかります。これが、被害者にも過失がある場合でのメリットになります。

もし仮に、過失の全くない事故の場合であっても、治療費の請求が適正かどうかの判断が審査機関でなされますし、大きな事故で重大な負傷を負った場合に治療費がいたずらに高額化することはやはり避けたほうが良いでしょう。健康保険を使用したためにできない治療というのはほとんどないでしょうし、もし仮にどうしても健康保険では投与できないが交通事故の治療に抜群の効果があるというものがあれば、それは相手の保険会社に伝えてその分だけ自由診療でおこなうことも考えればよいでしょう。

Q

通勤途中に事故に遭いました。労災保険は適用されますか。

A

適用されますが、受けた給付金分は賠償請求から控除されます。

交通事故にあったのが、業務中であったり通勤途上であれば労災保険が適用されることになるでしょう。しかし、交通事故の被害者が、労災保険から給付金を受け取った場合には、その分の損害賠償請求を加害者には請求できなくなります。この考え方は、健康保険でも同様です。といっても、これで労災で支払われた分、加害者が得をするわけではなく、結局は、その分を国が加害者に損害賠償請求することになるのです。

なお、交通事故と健康保険、交通事故と労災保険の組み合わせは、それぞれ使用可能ですが、健康保険と労災保険は重複はしません。これはその社会保険の性質から、日常生活をカバーするのが健康保険、業務中をカバーするのが労災保険という住み分けになっているからです。

Q

傷害事故の治療費は、どこまで認められるのでしょうか。

A

交通事故における治療費は、原則として医師の治療に基づく費用ということになります。医師が必要があると判断して、医師の管理の元に行う針灸などの施術であれば保険会社もまず認めるでしょう。逆に、医師の指示がないものについては、保険会社に確認をしておいたほうがいいでしょう。

接骨院や整骨院は、おおむね期間を区切って認定する傾向にあります。接骨院、整骨院の先生は医師ではありませんが柔道整復師という国家資格をもち、社会的には準医療機関という位置付けで考えられ、社会保険などの適用もあります。しかし交通事故の治療という特性もありますので、1か月から3か月をもって治癒すればそれほど問題はありませんが、それ以上の期間を要する場合には必ず保険会社に確認をおこなうことと、必要があれば医師の診断を受けておく必要があると思われます。

あんまやマッサージにかかる場合にも、必ず医師の指示書(診断書などの書面)を取り付けておき、保険会社にもそのことを伝えておいたほうが後のトラブル回避に役立つと思われます。

なお、裁判の場合には、あんま、マッサージなどの必要性については個別具体的に判断されますので、一概に保険会社が認めてくれなかったから請求はまったくできないとは限りません。

温泉療養もトラブルになりがちな治療です。温泉療養と一口にいっても、医療機関としての温泉病院の場合と、単なる観光地の温泉とにわかれます。医師が治療の一環として温泉病院への転院を薦めて入院加療をおこなったような場合にはまず問題はないでしょうが、それ以外の、いわゆる観光地の温泉における温泉療養の場合にはかなりの確率でトラブルになります。まず、一般的には医師の指示がある場合で、治療上有効かつ必要がある場合に限り認められるとは解されますが、保険会社との交渉段階では、ほとんどのケースは認めないでしょうし、仮に裁判まで進んだとしても、全額認められるケースは比較的少なく、また認められても額がある程度制限されることが多いようです。

Q

入院時の個室費用は請求できるのでしょうか。

A

特別の事情がなければ、入院は大部屋が基本。

損害賠償の算定の基本的考え方からすると、治療費においても適正かつ妥当な実費ということになりますので、入院費用(室料)については大部屋が基本になるでしょう。治療上における医師の指示があったり、症状が非常に重篤であったり、また大部屋に空室がなかった等の特別の事情があれば認められます。

もちろん、そのことは医師の診断書に記載してもらう必要があります。ただ単に他人と一緒の部屋には居たくない、というような理由では保険会社も認めませんし、裁判で争うことになっても認めてもらうのは難しいでしょう。医師の指示ではないが、どうしても個室に入らなければならない事情があるのでしたら、その時点で保険会社とよく話し合いをして、支払いの可否についてよく検討してどちらが支払うのかを決めておいたほうが良いでしょう。

Q

医療用の器具、装具、器械の費用は請求できるのでしょうか。

A

事故による受傷、もしくは後遺障害の為に日常生活に支障が生じたときは、不自由な身体の機能を補うための器具が必要になります。これらの器具の購入に要した費用は、受傷の部位、程度、後遺障害の状態、生活環境等を考慮して、身体の不自由を補完するために必要かつ相当な限度で請求する事ができます。

例えば、足を骨折したときの松葉杖、下半身付随になったときの車椅子のように、社会通念上当然必要となる器具がそれにあたります。これらの範囲を超えてくるものについては、担当の医師によく相談をし、どうしても必要であるという場合であればその旨の証明書を記載してもらい、それをもって保険会社とよく相談をしてからの購入をお勧めします

Q

義手、義足、車椅子の費用はどうなるのでしょうか。

A

医師の診断書は必要ですが、当然、請求は認められます。

事故による負傷、後遺障害のために必要があり、適正かつ妥当な金額の範囲であれば認められます。義手、義足などは、失ってしまった身体の機能をまさに補完するものですので請求することに問題はないでしょう。これらは人工的に作られた器具ですから、耐久性の面で永久にもつという性質のものではありません。請求の際には、耐久年数に応じて、交換の必要があるものは将来の買い替え費用も原則として認められます。医師に何年ごとに作り直すことが必要で、業者の費用は一回いくらくらいであるとの証明書を書いてもらうことになります。また、この将来にわたる作り替え費用は、中間利息を差し引いた上で、一括で請求することも可能です。

Q

後遺障害診断書を記載してもらうとその後の治療費はどうなるのですか。

A

後遺障害診断書を記載してもらうということは、今後それ以上の治療をしても残存してしまった傷害の程度が改善されない状態である(これを一般に症状固定と呼びます)ことを意味します。仮に症状固定の後においても継続して対症的な治療が必要であったとしても、その症状の改善は見込まれないわけですから、交通事故として相手方に賠償請求をすることができる範囲の治療は、一応終了したとならえざるを得ません。保険会社も症状の固定以後(後遺障害の診断後)の治療費は負担しないのが一般的です。

しかし、植物状態になってしまい寝たきりになった場合など、固定した障害が良くはならないまでも、その状態を維持する(悪くならないようにする)ための治療の継続が必要な場合には、その後遺障害の状態、程度により将来の治療費も含めて損害賠償として請求することができます。

Q

夫の入院に妻が仕事を休んで付添いをしました、損害を請求できるでしょうか。

A

医師が必要と認めた限りでは請求できます。

いまの医療事情からすると、ほとんどの病院では完全看護の建前が採られており、家族の付添いは原則できないことになっています。これは病院側の入院費用のなかには看護の費用も含まれているためと考えられています。しかし、その病状から医師が判断して、どうしても家族の付き添いが必要である旨の証明書が発行されれば、看護費用としての請求を行なうことは可能になるでしょう。

その場合には、妻が医師の指示に基づき看護を行なった期間の休業損害証明書を勤務先より取り付けて保険会社に請求することになります。保険会社もその証明書の限りにおいてある一定の金額は認めてくるでしょう。

Q

小学2年生の息子が入院し母親が付添いをしました、看護費用の請求はできないでしょうか。

A

小学生以下の子どもの付き添いであれば、医師の証明書なしで請求可能です。

保険会社の判断基準では、おおむね12歳以下の子ども(小学生以下)の場合には、医師の証明書がなくても家族の看護費用を認めてくるようです。これはその被害者の症状の程度というよりは、たとえ完全看護の病院であっても被害者である患者さんの年齢を考えた場合には、家族の付き添いがなければ有用な入院治療がおこなえないため、必要やむをえないとの判断からでしょう。保険会社の場合には定額の費用を計算してきますが、もし入院付き添いをおこなった家族が仕事を持っていれば、その方の休業損害の証明書をあわせて提出すれば、家政婦さんの標準料金を限度に認めてもらえると考えられます。

Q

5歳の娘の通院に母親が付添いをしました、費用の請求はできないのでしょうか。

A

前問同様、小学生以下の子供の通院付き添い費用は、医師の証明なしで請求できます。

入院の時と同じく、おおむね12歳以下の子ども(小学生以下)の場合には、1人で有効に通院治療を受けられるとは考えにくい状況です。普通で考えてみても、成年に達した親族の付き添いが必要なことは明らかです。保険会社もこの考え方に従い判断をしているようで、被害者の年齢を基準に、付き添い看護費用の認定をおこなってきます。

Q

仕事の都合もありタクシーで通院をしました、費用はすべて払ってもらえるのでしょうか。

A

仕事上の理由では認められません。事前に保険会社に確認を。

傷害の部位、程度、年令、交通機関の便などの総合的な事情から判断して、必要やむをえない場合に限り、相当程度の費用は認められるでしょう。

たとえば、足を骨折したために歩くことができないが、会社を休まないで出勤して、休業損害の発生はないような場合ですと、その休業損害の場合の金額とタクシー通院との金額を考慮して、タクシー代のほうが下回っているようであれば認められるでしょう。

また、そもそも通院するのに電車やバスなどの公共交通機関がない場合、あってもきわめて不十分な場合などの例もあげられます。

しかしその場合でも、事前に保険会社に話をしておき、タクシー代の支払いの確認はしておくべきでしょう。この質問のように、通院にタクシーを利用した主な理由が、仕事上の理由ということであれば、傷病からの事情とは違いますので、事前に必ず保険会社と打合せをおこなっておいてください。

Q

友人のマイカーで送迎をしてもらいました、謝礼は請求できないのでしょうか。

A

傷病の程度、内容から、1人で通院をすることは難しく、付添者が必要であり、かつ歩行も困難であるような特殊な事情が必要です。つまり、タクシー通院もおこなえないような状況ということになりますが、そのような状況であれば、そもそも退院が許可されないのではないかという考え方も働きます。

保険会社との交渉次第でしょうが、認められない可能性は高いと思われます。裁判で争うことになったとしても、上記のような状況を証明できなければなりません。また認められるとした場合にも、費用においては適正かつ妥当な金額ということになりますので、支払った謝礼がすべて認められるとは限りません。

Q

入院に際してパジャマやポットを購入しましたが費用は請求できるのでしょうか。

A

入院雑費として請求できるものは、日常雑貨費(ガーゼ等衛生用品)、栄養補給費(卵や牛乳など)、通信費(電話代、切手代など)、文化費(入院中購読する新聞や雑誌代)などです。パジャマやポットは確かに入院したために購入したものであっても、後でも使用できることや、必要欠くべからざる品とはいえないので認められないでしょう。

入院中の雑費を請求するには、領収書等で立証をする必要がありますが、個々の出費は比較的小額ですのでこれらを逐一添付するのは煩雑である上に実益にも乏しいことから、一日あたりの費用が定額化されているのが実情です。しかし、負傷の状態からやむを得ず紙おむつを大量に使用せざるを得なかった、などの特別な事情のある場合には、後で定額のほうが高いのか、実費のほうが高いのか比較するために領収証を残しておき、検証したほうがよいでしょう。

Q

事故のために流産してしまいました、損害賠償の請求はできるのでしょうか。

A

請求はできますが、金額は裁判で争うことになるでしょう。

被害者である妊婦が、事故のために流産してしまった場合には、通常の傷害慰謝料の額だけでは精神的苦痛に対する慰謝をなしたとはいえません。判例でもこの慰謝料については別途考慮しています。しかし、その金額は一律にはなっておらず、その事例により様々ですので、裁判で争うことを念頭に検討をしたほうがよいでしょう。

なお、保険会社もそのような場合にはいくらかは賠償金として認定はおこなってくるようですが、裁判ベースとはかなりの開きがあるのが現実のようです。

Q

事故のため、大学を一年留年してしまいました。学費や卒業が遅れた分については損害として請求できるのでしょうか。

A

因果関係が明らかであれば、損害の請求が可能です。

交通事故が原因で留年したことが明らかであれば、余分に支出せざるを得なかった学費は請求することができます。もし、その被害者が親元を離れて一人暮らしをしていたような場合においては、余分にかかってしまった家賃などもその請求の対象にできるでしょう。

また、留年したことによって卒業、就職も1年遅れるわけですから、その減収分は休業損害(こちらを参照)もしくは逸失利益(こちらを参照)として請求することができます。算定の基礎とされるのは、大卒同年齢の平均賃金となるでしょう。

しかし、当然のことながら、事故以前に学業不良であったり、出席日数が足りないなどの事情がある場合には、事故に遭ったことと、留年してしまったこととの相当因果関係がありませんので、そのような場合には請求は不可能と思われます。

Q

メガネが破損した場合に請求できるのでしょうか。

A

現状復旧の範囲で、請求できます。

メガネは身体の機能を補完するものなので、対人賠償保険においてはその支払いの対象となっています。損害賠償としては、壊れたメガネと同程度のメガネの価格がその請求金額の目安となります。同様の理由から、補聴器や義手、義足などが損傷した場合にも、その復旧の費用が請求できます。

当然のことですが、現状復旧の費用(妥当な実費ともいいます)が大原則ですので、普通のメガネが破損したからといって、損害賠償請求をおこなう際に鼈甲(べっこう)のメガネなど、高価なものを請求できないのはあたりまえのことです。

Q

医師等への謝礼や見舞い客への接待費用などは請求できるのでしょうか。

A

それは治療費ではないので、認められないのが原則です。

救急車にて搬送された病院で緊急手術を受けたおかげで一命を取り留めた場合など、治療を受けた患者の側が、その担当医師に謝礼を支払うのは、社会一般的に広くおこなわれているところです。厳密にいえばそれはあくまでも謝礼であり、治療費ではありません。交通事故に遭ったからといって、必ず出費を余儀なくされる性質のものでもありません。

しかし、前述の通り、緊急手術を受けたような場合において、謝礼を支払うことが社会一般の常識から考えて相当性を欠くとはいえません。保険会社との交渉の段階においてはなかなか認められないでしょうが、裁判例では、その謝礼の額が著しく高額でなく相当程度の金額であれば認めている傾向にあります。

これに対して、見舞いに来てくれたお客様への昼食代やお茶菓子などの接待費用については、裁判例でもほとんど認められていないのが現実です。その理由としては、お見舞いという行為自体がたぶんに人としての社会生活上の慣行の一部としておこなわれており、そもそも損害賠償という考え方にそぐわないものであるからです。

Q

修理費用はどのように決まるのでしょうか。

A

修理工場でも見積もりをたてますし、場合によっては保険会社の物損事故調査員(アジャスタ−)が立ち会い作業を行い、見積もりをたてます。

修理費用は修理工場とアジャスタ−が協定することが多いようです。修理の可否を判断する、全損、分損という判断もこの段階でおこないます。全損とは、その車の時価額(評価額)を修理見積もり金額が上回ってしまう場合を指します。分損はこの逆です。全損の場合には、保険会社が提示してくる金額と、被害者が現実的に買い替えをおこなう場合の諸費用などの面でギャップが出ることが多いため、交渉は往々にして揉めます。

Q

被害にあった車両について保険会社から「全損」といわれたのですが、どのような意味なのでしょうか。

A

事故当時の事故車両の時価額を上限に修理費用を認めるということです。

自動車の損害といえば、普通考えられるのは修理に要する費用でしょう。ほとんどの場合においてはこの考え方で間違ってはいません。しかし、自動車といえども、物であることにはかわりがありませんから、修理に要する費用であれば上限なくいくらでも認められるというものではありません。物である以上、その時における時価額という観念があります。時価額とは、その自動車の年式、車種、などや使用状況、走行距離などから判断されます。概して、中古車市場で同年式、同程度の車両を再調達するのに要する費用として考えておけば間違いはないでしょう。たとえば、事故当時の時価額が50万円の自動車であれば、修理費用はその金額を上限に認められるということです。保険会社から「全損」という連絡を受けたというのはこのことを指しています。

現在の日本の自動車修理業者の技術をもってすれば、おそらく費用に上限を定めなければほとんどの事故車両の修理が可能でしょう。しかし、それではいたずらに損害額の高額化を招いてしまい、経済的ではありません。裁判所の判断でもほとんどこの考え方によっています

Q

交通事故で被害にあった車両の修理はしましたが、転売の時に査定価格が落ちると聞きました、その分の損害を請求できないものでしょうか。

A

修理をした自動車ディーラーやその他自動車の査定機関でその自動車の査定価格を評価してもらい、具体的な査定価格の下落分を請求しましょう(必ず認定されるものではありませんのでご注意ください)。

自動車がひとたび事故に遭い修理をしたとなると、中古車業者やディーラーに買い取りを依頼すると、事故に遭っていない自動車よりも査定価格が下がると一般にいわれています。これをよく「評価損」ですとか、「格落ち損」などと呼んでいます。現実にこのようなことが発生するのか、するとしたらいくらぐらいの損害が発生するのかは、事故車両とまったく同型式、同年式の車両との比較をしなければわかりません。

しかし、逆に自分が中古自動車を購入する場合を考えてみればよくわかります。同型式、同年式の中古車で値段も同じで片や事故経歴のある自動車、片や事故経歴のない自動車であれば、おそらく事故に遭っていないほうの中古自動車を購入するでしょう。そうすると、どうしても中古車業者やディーラーが買い取るときの値段も、事故経歴のない車と比べれば下がってしまうでしょう。この理論上低下してしまった金額の差額が、被害者が負った損害なのです。

保険会社では、新車購入からあまり時間が経っておらず、走行距離もあまり伸びていない自動車で、しかも自動車のフレーム部分にまで損害が及んでいるような大きな事故の場合しか評価損を認めない傾向にあり、認めても修理費用の20%程度を目安にしているようです。特に、被害者側にも過失が出るような事故状況であると、「100:0以外は認めません」という理由で支払いを拒んでくることが多いようです。しかし、損害の発生と事故状況には実は関連性はありません。その点は保険会社によく説明を求めた方がよいでしょう。場合によっては、交通事故相談センターや交通事故紛争処理センター、調停などの場へ相談を持ち込むことも必要です。

Q

交通事故で亡くなった親族の葬儀代を請求できますか。

A

ある程度の金額までは認められます。

葬儀費用という費目の損害は、現在ではある程度の金額(自賠責、任意保険では60万円〜100万円、「損害賠償額算定基準」や「交通事故損害額算定基準」でも150万円程度)までは認定されます。この場合に、一般的には、死亡者の相続人が請求できるものと考えがちですが、実際に請求できるのは、現実に支出を余儀なくされた人になります。この質問のケースですと、親族であることは間違いがないようですが、相続分があるのか否かは不明です。しかし、上記のような理由から、いずれにしても費用の請求は可能です。

Q

弁護士に交渉を依頼しました。弁護士費用は請求できますか。

A

裁判による判決の場合には請求が認められているケースが多いようです。

交通事故の賠償金を請求する際に、弁護士に依頼したために発生した費用(弁護士費用)は、一般的には相手方には請求できないものと認識しておいたほうが無難です。当事者同士による示談交渉(保険会社を含む)、交通事故紛争処理センターでの示談斡旋などはもちろん、調停、裁判上の和解のケースでも、一部の例外を除き、弁護士費用は認定されないようです。ただ、例外的に裁判による請求において、判決で決着するケースには、弁護士費用が認められているケースが多数あります。

消極的損害

Q

事故の治療のために有給休暇を使ってしまいました。賠償請求はできないでしょうか。

A

金銭換算して休業損害として請求できます。

有給休暇とは、会社から従業員の権利として与えられているものですので、いつ、どのような目的で使うかは個人の自由に任されています(厳密には使用者の時季変更権というものもあります)。そのような、有給休暇を事故の負傷のためにすべて消化してしまい、たとえば風邪を引いて休暇を取るときに有給休暇を使用できなかった場合には、有給休暇の振替ができず、欠勤扱いで給与が即座にカットされてしまうでしょう。このような考え方から、事故で消費してしまった有給休暇については、その相当分を交通事故の損害として金銭換算して請求することができます。

Q

事故による休業のため賞与がカットされました、賠償請求はできるのでしょうか。

A

可能ではありますが、勤務先の賞与減額証明書などが必要になります。

賞与の場合には、その勤めている会社の業績や、実際に勤務している職場の業績、社会の景気動向など、様々な外的な要素が絡んで支給額が決定されることが多いでしょう。単に事故で仕事を休んだことが賞与カットの理由にはならない可能性があり、またその判別も非常に難しいものとなります。特に本人の勤務評定なども要素に加味されるようになると、いっそう複雑になります。事故による負傷のため、賞与算定期間をすべて休んでしまい、まったく支給されなかったようなケースであっても、その期間に仮に事故がなく通常どおり勤務していたら得られたであろう賞与金額の算定もやはり難しいものがあります。

しかし、ある程度賞与の支給基準が決定していて、欠勤日数に応じて減額してゆくような計算式がきちんと定まっており、賞与の支給基準が就労規則などに記載されているようなケースであれば、比較的容易に客観的な証明が可能となるでしょう。その場合には、勤務先の会社で賞与減額証明書を記載してもらい、賞与支給基準が記載されている就労規則を添付して請求することができます。

Q

通院のため残業がまったくできませんでした、その分の請求は可能でしょうか。

A

可能な場合もありますが、いろいろな証明の必要あり。

正規の就業時間内においての休業がなかったとなれば、休業損害としての請求は難しいかもしれません。しかし、その勤めていた職場の特性として、恒常的にすべての社員が残業をしていて、また被害者も事故に遭う前から職場の全員と同じく恒常的な残業をしていた事実があり、さらに休業損害証明書で明確に基本給と残業代とで分けて証明され、会社のほうでもその残業できなかった日数を証明してくれれば、請求できる可能性はあります。

あとは、残業できなかった理由が、事故による負傷のためということの証明が必要です。仕事に支障がでないように、就業時間外に通院をしていたということであれば、通院した日の把握が可能ですので、証明は比較的簡単になされるでしょう。

Q

休業したことを理由に昇給昇格が見送られました、賠償請求はできますか。

A

因果関係の立証が難しく、認められにくいのが現実です。

会社員の場合、入院などによる治療が長引けば長引くほど同僚と比べて昇給の遅れがでることもあることでしょう。会社を長期に休まざるを得ない状況でしたら、昇給に差がつくことも頷けます。その昇給昇格の遅れは、基本的には勤務期間に応じた遅れですから、会社を辞めるまで続くことになるでしょう。そして、その昇給が遅れた分だけほかの同僚に比べて得る収入が少なくなり損害をこうむることになります。

しかし、昇給や昇格などは、個人としての評価に基づいて実施されるものであり、また一般にはなかなか外部に出てくることが少ないですから、その昇給、昇格の遅延がはたして交通事故によるものなのか否かの証明をすることが難しいでしょう。たとえば、公務員や公共企業体職員、大企業の会社員のように昇給規定や昇格規定が明確に存在している場合には、容易に証明ができるでしょうが、賃金体系が制度化されていない中小企業の場合や個人商店の社員などの場合には、その企業の実績や規模、職種等に大きく左右されやすく、その昇給昇格の遅延の理由が「交通事故による」ものであるという証明は容易にはできないでしょう。

いずれにしても、保険会社との示談交渉の段階では容易に認めないと考えられますので、証明できる証拠をできるだけたくさん集めて示談交渉をおこない、交渉がうまくいかないようであれば、裁判所での判断を仰ぐ方法を検討するべきです。

Q

休業したために会社を解雇されてしまいした、どうしたらよいでしょうか。

A

事故による負傷・休業を明らかな理由としての解雇であれば、再度の就職に必要にして相当の期間は休業損害の請求も可能です。

非常に難しい問題であると思います。事故による負傷、休業を明確な理由として、会社のほうが解雇の通知を出してきたのであれば、事故による休業を証明する診断書とその会社からの解雇通知などで「交通事故による負傷のための解雇」という証明が十分に可能でしょう。それがとれれば、傷病がある程度まで回復して、次の職業に就けるまでの期間は従前の収入に合わせた休業損害の請求が可能であると考えられます。

しかし、会社の側は、不当解雇としての糾弾を避けるために、まず事故による負傷を理由にした解雇通知は出さないでしょう。恐らく、このようなケースで一番多いのは、希望していない部署への配転や嫌がらせなどで会社に居づらい雰囲気を作り、結局は被害者本人から会社を退職するということを言わせる方法によるものだと思います。こうなってしまうと、事故と退職との相当因果関係を証明することは非常に難しくなります。そうなる前に、辞めるのであれば解雇通知を取るように心がけておきましょう。

Q

採用内定は決まっていましたが、働き出す前に事故で負傷しました。休業損害は請求できないのでしょうか。

A

休業損害が認められる可能性は高いでしょう。

休業損害とは、交通事故により受けた傷害の治療のために休業を余儀なくされ、その間収入を得ることができなかったことによる損害のことです。無職者は事故当時、現実の収入がなく、就業していないことを理由に原則として休業損害の認定は否定されますが、就職が内定している場合など、その治療継続中に就職して仕事について、給与を得ていた可能性が高ければ認められます。具体的には雇用契約書や採用内定証明、特に勤務開始日や約束されていた給与金額、休業日などの記載されたものが必要になります。

Q

社員が事故に遭った場合、会社としては損害を請求できないでしょうか。

A

休業中に会社が支払った給与については賠償請求できます。

社員が交通事故によって受傷し、就労していないにもかかわらず、会社がその社員に支払った給与については、会社から加害者に請求できます。本来、被害者である社員が加害者から受けるべき損害を会社が加害者に肩代わりして支払っているといえるからです。ただし、社員が有給休暇を消化した場合などは会社の損害とはなっていないため、請求はできません。

また、被害者である社員が休業したことによって会社の収益に減少をきたした場合に、会社として損害賠償を請求できるかという問題があります。これは一般に「企業損害」と呼ばれていますが、まずほとんどの場合には請求は難しいでしょう。なぜなら、社員はあくまでも1人の社員であり、業務を遂行するうえで必要な人間がいれば代理の人間を立ててその仕事を進めることも十分に可能であり、会社である以上はその危機管理体制は十分におこなっているべきであると考えられているからです。

Q

失業中ですが、休業損害は請求できるのでしょうか。

A

原則的には、失業中の休業損害は認められませんが・・・。

休業損害とは、原則として事故当時に就労していた人が、その事故の負傷のために就労することができなくなったため、本来ならば得られていたであろう給与金額を請求するというものです。事故当時に就労していなかった、収入がなかったということは休業損害発生の前提条件を欠いてしまい、その請求はできないということになります。

しかし、失業保険の給付も終わり、本来ならば再度の就職をなしえたであろう時期になっても、いまだ傷病が治癒しておらず、そのために就職ができないような状況であれば、その期間の休業補償の請求は可能であると思われます。その場合には、失業保険の給付日額を基礎に算定することにはなるでしょうが、保険会社とよく話し合いをおこなっておく必要があります。

Q

休業したにもかかわらず会社役員であるということを理由に支払いを拒否されました、どういうことなのでしょうか。

A

原則では、役員には休業損害は発生しませんが、現実はケースバイケース。

会社役員は会社の経営をおこなうことにより報酬を得るものであり、役員報酬は会社の利益の配当にあたります。会社の利益配当は働けるとか働けないとかには関わりなく支払われるべきものですから、働けなくなったとしても会社員のような休業損害は発生しません。労働者のように労働の対価として賃金を得ているということとは違うため、保険会社は休業損害の支払いを拒否する場合が大半です。

しかし実際に、小規模な会社であれば役員報酬にはあなたが実際に働くことよって受け取るべき労働の対価が含まれている場合もあります。その場合には、あなたの役員報酬のうち、労務提供の対価に相当する部分につき休業損害が発生すると考えることができます。つまり、役員報酬の名目で会社から金銭が支払われていても、実質は労務提供の対価部分があると休業損害が発生するのです。逆に「給料」の名目で支払われていても実質が会社の利益配当であるならば休業損害は発生しないことになります。役員報酬のうち、何割が労務提供の対価部分にあたるのかはケースバイケースです。しかし、社員がわずかしかおらず社長自ら労働をしているような場合は、労務提供の対価部分は相当大きくなると考えられます。反対に東証一部上場企業の社長のような場合は、労務提供の対価部分はほとんどないということになります。

いずれにしても、現実の減収が発生していなければ請求はできません。

Q

事故前年度の確定申告を過少申告していました、実際の収入による請求はできないのでしょうか。

A

修正申告をおこなえば、それをもとに損害の請求はできますが・・・・・・。

休業損害を算定するに当たって基準となるのは、あくまでも被害者本人の所得です。当然裏づけ資料が必要になり、事業所得者の方の場合にはその裏づけ資料は確定申告書ということになります。事故の前年度において、所得を過少に、経費等を過大に申告していたということは、ある意味において本来収めるべき税金の額を免れていたことになりますので、交通事故の場合において休業損害として得られる額が少なくなったとしてもやむをえない面ではあります。

しかし、どうしてもということであれば、実際の収入が申告した額よりも多かったことを証明しなければなりません。そのためには、税務署に出向き、正しい金額での修正申告をするしかないでしょう。ただしその場合には、税務申告上のペナルティー(過少申告加算税など)が課される覚悟が必要です。

さらに過去の裁判例でも、「修正して申告された確定申告書に信憑性がない」として、そもそもその修正申告した確定申告書に証拠としての能力を否定したケースもあります。修正申告をして追徴課税を納付して、損害賠償の裁判では証拠として認められない、という最悪のケースもありえます。

常日頃から、きちんとした確定申告をおこなっておく以外には有意義な防衛策はないといえるでしょう

Q

自営業ですが、休業している間の固定経費は請求できないのでしょうか。

A

請求が認められる傾向にあります。保険会社と話し合いを。

自営業者の方の場合には、事故前年度の確定申告書をもとに、休業損害の日額を算出します。通常その算出の際に使用する金額は、課税される所得金額部分を指しています。しかし、まったくの個人事業主の方で、本人以外にその業務に携わる人がいない場合で、かつ完全休業を余儀なくされているような場合、その事業のランニングコストにあたる固定経費が除外されるのはおかしいのでは・・・という考え方もあります。確かに、事業をおこなうための事務所を住居とは別に賃貸している場合や、什器備品をリースしているような場合など、被害者本人が休業していて就労できずにいるのに消費してしまう経費があり、それが休業損害の算出においてまったく考慮されないのはおかしいでしょう。

保険会社では、1人で事業を営んでいる方の場合には、固定費を、課税される所得部分に算入して休業損害の日額を算出する傾向にあります。ですから、従業員を使用せずに1人で事業を営んでいらっしゃる被害者の方で完全休業を余儀なくされた場合、どのような計算で休業損害の日額を算出したのか保険会社に確認をしたほうがよいでしょう。

なお、保険会社でいうところの固定経費とは、確定申告書のなかにおいて「租税公課」、「損害保険料」、「地代家賃」、「減価償却費」などの言葉で表されているものです。しかし、この文言以外のものであっても、明らかに固定経費として休業中も出費を余儀なくされるものは、事前に保険会社とよく話し合いを行ったほうが良いでしょう。

保険会社との話し合いで解決を見ないときには、交通事故紛争処理センター(こちらを参照)や調停(こちらを参照)、裁判(こちらを参照)などの方法を検討してくだ

Q

完全休業していたのに保険会社から実治療日数で支払うといわれました。どういうことなのでしょうか。

A

休業日数の証明が難しい自営業者に対する保険会社の認定方式です。

自営業者の方の場合には、会社員のケースと違い客観的に休業を証明してくれる方がいません。そのため、休業日数を客観的に知るための資料が保険会社には存在していないのです。このことは、訴訟においても、同じように休業日数を証明するのに問題となる部分です。

たとえば、まったくの個人事業主の被害者が入院していた場合には、その入院期間中は物理的に就労は不可能ですから、ある意味休業日数を証明する必要はないでしょう。問題は退院した後の通院、もしくは当初から通院しているような場合です。負傷の程度によっては、まったく就労できなかった日もあるでしょうし、また徐々に回復してきている場合には、病院に通った時間だけ就労できず、それ以外の時間は就労できたという場合もあるでしょう。これは、負傷の程度のほかに、その方の置かれている就労環境にも大きく左右されるものです。そうなると、負傷の程度、職業の種類、態様、その他様々な要素で変化しますので、一律の判断はとてもできません。そのため、保険会社では、自営業者の方の場合には、休業日数を、「実治療日数」を基準として把握するようです(実際にはこの実治療日数の2倍を限度に斟酌するようですが)。

実治療日数とは、入院の実日数プラス通院の実日数を指します。この算定方式では、休業の事実と著しくかけ離れるようであれば、保険会社とよく話し合いをおこなう必要がありますが、その場合には客観的にある期間は就労が不可能であった旨の証明をする必要があります。前述の通り、自営業者の方の場合のその休業期間の証明は非常に難しいのが実情です。可能性としては、担当医師の診断書(就労できない期間の記載をしてもらう等)を準備する方法になるでしょう。

Q

赤字経営の場合は休業損害の請求はできないのでしょうか。

A

赤字経営だからといって、休業損害の請求ができないわけではありません。

確定申告上において赤字申告をしている方の場合、その状態だけを形式的に突き詰めてゆくと、その事業を営んでいる限り赤字経営になるわけですから、休業したことで相手方に請求できるものはないということになるでしょう。

しかし、売上からその他様々な経費を控除した結果が、赤字申告になるということであり、その労働に対して価値がないという判断はおかしいものとなります。よってある程度の休業損害は補償されるべきものでしょう。保険会社の対応も、赤字申告だから休業損害は支払いません、というようなことはいって来ないのが普通です。

問題はその額(日額)をいかように算出するのかということです。保険会社の対応の場合には、自賠責保険の休業損害の最低基準額を重ね合わせてくることが多いようです。

Q

代替労働者を雇って減収は免れました、代替労働費の請求は可能でしょうか。

A

本人の休業損害に相当するものとして請求可能です。

交通事故による負傷、休業にあたり、実際には減収はしなかったけれども、代わりの人(代替労働者)を雇いその人に給料や賃金を支払ったとなると、交通事故がなければ、本来それは被害者であるあなた自身の労働でまかなえたものであり、そのような支出はしなくてすんだはずのものなので、その支出分は被害者本人の休業損害に相当するものとして加害者に請求できると思われます。

ただし、特別な理由もないのに給料が高い人を雇ったり、必要以上に多くの労働者を代替労働者として雇うなどした場合には、その支出した費用全部ではなく、その一部の平均的な賃金分、必要にして相当な分しか請求はできないでしょう。

Q

専業主婦ですが休業損害の請求は可能でしょうか。

A

可能ですが、保険会社の基準で認定されると金額は少なくなります。

専業主婦であっても休業損害の請求は可能です。家事労働それ自体は目に見える金銭的な対価を生みだしてはいませんが、現実には家族がこのことによって利益を受けているわけですから、家事労働分をまさに家政婦さんなどを雇った際の損失とみなして交通事故の損害と評価すべきと考えることができるからです。

その損害評価の算定においては、一般に保険会社では自賠責保険の基準を準用しているようですが、弁護士基準においては全学歴全年齢の女性の平均賃金(賃金センサス等)を用いています。休業期間においては、その被害者の方ごとに負傷の内容、治療の経過などが様々ですので一概にはいえませんが、任意保険会社では実際に治療した日数(実入院日数や実通院日数)を参考にしているようです。

平成14年現在の基準を比較すると、自賠責保険(任意保険も同様)の基準では1日あたり5,500円(平成14年4月1日以降の事故の場合には5,700円)、弁護士が使用する基準(損害賠償額算定基準)では1日あたり9,584円になります。

Q

パート兼主婦ですが、どのように休業損害は計算されるのでしょうか。

A

パートと主婦の二重の休業損害を請求することはできません。

専業主婦でも、働いている女性と同様に取り扱い休業損害の算定をおこなうわけですから、休業損害の算定自体をおこなうことには疑問はないでしょう。問題は両方の損害を請求できるのか、というところです。この場合も一概にはいい切れませんが、その被害者の主たる職業がどちらにあるのかというところが一つの判断の目安にはなるでしょう。

たとえば、1日のうちほとんどをパートとしての就労にあてていて、家事は旦那さんと折半しているようであれば、主婦としての休業損害の算定よりもパート労働としての休業損害の算定が現実に即していることになります。また同居している家族の中に、たとえば祖母が同居していて家事全般はその人がおこなっているような状態であれば、主婦としての休業損害はそもそも請求することはできません。逆にパートに行くのは月に何回かで、その実態としては専業主婦に限りなく近いのであれば、パートとしての休業損害ではなく、主婦としての休業損害の請求をおこなうことが実態に即することになるでしょう。

ただし、主婦の休業損害の金額にパート代を加算した額を休業損害の基礎とはしません。ここでもやはり二重の評価をすることはできず、パート代が平均賃金を超えていれば、パート代を基礎として休業損害を計算するということになります。いずれにしても、実態に即した損害の請求ということになります。

Q

乳児を抱えていたためやむを得ず家政婦を頼みました、休業損害として請求できないでしょうか。

A

休業損害として認められやすいと思われます。

裁判例では、専業主婦が受傷し家事労働に従事できないため、代わりに家政婦さんなどを雇った場合にはそれに要した必要かつ妥当な金額を損害と認めています。ほかに代替の手段がなく、とくに乳幼児の家族を持つ場合には、誰かがその世話をしなければならないという事情も明らかですので、認められやすいでしょう。しかし絶対的に認められるものともいえませんので、加害者側の保険会社によく事情を話し、相談して進めたほうが無難でしょう。

保険会社との話し合いで解決を見ないときには、交通事故紛争処理センターや調停、裁判などの方法を検討してください。

Q

会社員の逸失利益はどのように計算するのですか。

A

原則は、事故前1年間に支給された給与と賞与の合計額を基準に計算されます。

会社員の逸失利益算定の基礎となる収入は、原則として事故前の現実収入額です。通常、事故前1年間に支給された給与及び賞与の額が基礎とされます。しかし、勤め先に入社したばかりだったり、事故前に別の傷病により長期欠勤していたために本来得ていたであろう金額を大きく下回ってしまう場合などの特別の事情がある場合には、その旨を相手方である保険会社に申し入れて、実態に即した評価がなされるように証明を検討する必要があります

Q

入社したての会社員の場合にはどのように算定するのでしょうか。

A

現実の収入額が証明できるからという理由で現実収入額を基礎にすると、平均賃金を基礎として計算をおこなう学生の場合の逸失利益との比較において、著しい不均衡が生じることになってしまいます。これは、入社1年目の9月に事故にあったようなケースを想定すれば容易に想像できるでしょう。また入社2〜3年目の方が死亡事故にあってしまったようなケースでも同様の問題が起こります。そういったケースにも不公平な結果を生まないように、裁判などでは、入社したての会社員も全年齢の平均賃金を基礎として逸失利益の算定をしているようです(おおむね30歳くらいまで)。被害者が大卒であれば大卒の全年齢平均を、その他の場合には学歴計または学歴に応じた平均賃金を基礎としています。

これは、東京、名古屋、大阪の3つの地方裁判所の共同提言に盛り込まれていた内容ですので、保険会社もその考え方に従って算定をおこなってくるようです。

Q

専業主婦も逸失利益の算定は可能でしょうか。

A

専業主婦でも逸失利益は認められます。

専業主婦の休業損害でも述べたように、家事労働分が損害と評価され、主婦という職業に従事していると考えるからです。算定の基礎となる収入も、休業損害の場合と同じく平均賃金を用いています。

Q

年金生活者は逸失利益の請求はできないのでしょうか。

A

おおむね請求できますが、年金の種類により算定基準もまちまちです。受けている年金が逸失利益算定の基礎になるものかどうか、保険会社に確認が必要でしょう。

年金受給者である被害者が死亡した場合、当然年金の支給も打ち切られます。ある一定の遺族には遺族年金が転給という形で支給されますが、その金額には従前のものとは差があり、受給額が減ってしまうこともあるでしょう。場合によっては転給自体が認められていないケースに該当するかもしれません。

裁判例では、年金も逸失利益の基礎と認めて算定をおこない、遺族が受けることが確定した遺族年金の額を損害額から控除するという方法をとっています。保険会社においても、年金についてはおおむね逸失利益の算定をおこなうようです。

しかし、一口に年金といっても、その種類は様々であり、どの種類の年金が逸失利益の算定の基礎となるのかは一概にいい切れません。保険会社にその交通事故の当時に受給していた年金の種類を伝えて、逸失利益の算定の基礎になるものかどうかを確認をしたほうがよいでしょう。

Q

幼児の事故の場合には、その逸失利益はどのように計算がなされるのでしょうか。

A

18歳から働くと仮定して、平均賃金で計算されます。

死亡事故や後遺障害の場合の逸失利益の算定は、被害者が交通事故によって死亡もしくは後遺障害が確定したときに、原則として事故当時の現実収入額を基礎として算出するという方法を採っています。しかしこの方法に基づくと、事故当時収入を得ていない乳幼児、学生などの場合には、逸失利益の算定ができないという事態におちいってしまいます。このような状態は当然公平とはいえませんので、実際には、全年齢の平均賃金を用いて逸失利益の計算を行ないます、幼児の死亡もしくは後遺障害の確定直後から、平均賃金の収入があったものとして計算するのは過大な算定となってしまいますので、逸失利益の算定実務では、18歳から働くものと仮定して計算をしています。

Q

顔面醜状痕の場合には逸失利益は計算しないのでしょうか。

A

認める判例も出てきました。

かつては、顔面醜状(広い意味では外貌醜状)は身体的機能に支障を及ぼすものではないから、外貌が職業に重大な影響を有するホステス、モデル、芸能人などを除いては、その労働能力の低下をきたさないとして、逸失利益を認めず、慰謝料算定の際これを斟酌するにとどめるという扱いが多かったようです。しかし最近では、女子の外貌醜状については、将来就職する場合にその選択できる職業の範囲が著しく制限されたり、労働条件のよい企業に就職することや転職、再就職の機会を得ることが困難になることなどを理由に、労働能力の一部喪失を認め、逸失利益を認める判例が出てきました。

具体的な労働能力喪失率や期間にいついては、個別的に判断されているようですのでここに一律に記載をすることはできません。なお、男子の顔面醜状による逸失利益も女子ほどではありませんが認められる場合もあるようです。

Q

後遺障害の認定方法や基準はどのように決められているのですか。

A

自賠責保険が定める後遺障害等級が認定基準になります。

交通事故の後遺障害として一般に認知されているものは、自賠責保険が定めている後遺障害等級であり、その等級は障害の程度の重いほうより1級〜14級までと定められています(自賠法施行令第2条→後遺障害別等級表)。等級の認定に際しては、自賠責保険の適用がある交通事故については、この定められた等級の中からどの後遺障害に該当するのか(もしくは該当しないのか)を、損害保険料率算出機構・自賠責損害調査事務所という機関が審査、認定作業をおこないます。

一般に交通事故として定められている後遺障害は労災保険の後遺障害認定基準を準用しているといわれ、その内容も定型化されています。また労働能力喪失率という、いわゆる失ってしまった労働能力の比率についても一律に定型化されていて、なかには実際に被害を受けた現状に即していないようなこともあるでしょう。そうした場合には、後遺障害の等級評価も含めて裁判で争うという方法もとれます。そうなれば、裁判所は、自賠責保険の認定基準を参考にしながら、その申立てをおこなった被害者の実態、実情について審理をしますので、現実に被害を受けた内容に即した評価を得ることができることになるでしょう

Q

示談を締結したあとに後遺症(後遺障害)がでました。もう請求はできないのでしょうか。

A

示談当時予想できなかった後遺症(後遺障害)については請求も可能です。

示談では、加害者が被害者に対して一定の金額を支払うことを約束するのと引きかえに、被害者はそれ以外の賠償請求権を放棄するという文言になっているのが普通です。このように、示談をすると示談当時に被害者に示談額以上の損害があったとしても、被害者はその差額を請求できなくなります。同じように加害者も、被害者の実際の損害額が示談額以下であったとしても、その差額の返還を請求することはできません。このことから考えてゆくと、示談締結後に、後遺障害が残っていたことがわかったとしても、それに対する賠償請求はできないことになります。

しかし裁判例の考え方は、示談の対象になっていたものは示談締結当時予想していた損害についてだけであって、示談締結当時に予想し得なかった後遺障害等の損害についてまで被害者が請求を放棄したものではない、というものです。つまり、示談後に後遺障害が残ったことがわかったとしても、その分は新たに賠償請求できるということになります。

但し、この後遺障害としては、痛みが時々発生するとか、なんとなく患部に違和感が残っている、という程度のものではなく、医学的にその後遺障害と交通事故との相当因果関係が証明できるということが条件になってくるでしょう

Q

後遺障害10級11号(下肢関節の障害)の確定後に被害者が交通事故とは別の事情で死亡してしまいました。残された遺族はもう賠償請求はできないのですか。

A

死亡前の状態における賠償金の請求が可能です。

判例は、交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていた、などの特段の事情がない限り、死亡の事実は就労可能期間の算定上考慮すべきものではないとして、死亡後の逸失利益を認めています。

しかし、その計算方式において、事故に遭われたご本人が亡くなってしまっていますので、その算定方式は後遺障害の単純なそれとは異なり、生活費に要したであろう部分の控除がなされるなど、ある一定の制約は受けることになるものと思われます。

慰謝料

Q

慰謝料にはどのようなものがあるのでしょうか。

A

事故による負傷の痛みなど、肉体的、精神的苦痛を慰謝するものが慰謝料にあたります。後遺障害の残存した場合、死亡の場合などは、傷害慰謝料とは別に計算をされます。

Q

慰謝料の基準額はあるのですか。

A

自賠責保険で定めている基準、任意保険会社で定めている基準、弁護士が使用する基準などがあります。

けがに対する慰謝料、後遺障害に対する慰謝料、死亡に対する慰謝料と、一口に慰謝料といってもさまざまですが、それぞれに各保険の基準が存在します。たとえば、自賠責保険の場合には、けがの慰謝料は、通院1日に対して4,100円(平成14年4月1日以降の事故については日額4,200円)を実治療日数の2倍を掛けて算出する(現実の治療期間を限度とします)のに対して、任意保険では傷害慰謝料算出表に当てはめて算出することになっています。後遺障害慰謝料、死亡慰謝料など、場合によっては各基準間でかなり金額差のあるものもあります。

任意保険傷害慰謝料表

任意保険後遺障害慰謝料表

任意保険死亡慰謝料表

Q

慰謝料を請求できるのは誰ですか。

A

原則は、被害者本人とその相続人が請求できます。

基本的には、慰謝料を請求する権利者は、傷害事故の場合は被害者本人です。死亡事故の場合には被害者本人は亡くなっていますので、原則としてその交通事故の被害者の相続人に相続されることになります。

ただ、死亡事故の場合には、「父母、配偶者、子」は、相続による損害賠償請求の他に遺族固有の慰謝料というものを請求できます(民法711条)。また、被害者が死亡しなくても、死と同視できるような後遺障害が残ったとき(裁判例では後遺障害1級3号のような重篤な精神神経障害、寝たきりのような事例を想定しているようです)には、一定の近親者(父母、配偶者及び子)などには死亡事故と同じように慰謝料請求権を認定しているようです。

Q

兄の死亡事故で妹は慰謝料請求できないのでしょうか。

A

相続関係があれば兄の慰謝料は請求できるが、妹自身の慰謝料は認められにくい。

兄の死亡事故に際して、その妹が相続関係にある場合には、妹は亡くなった被害者自身の慰謝料請求権を相続して行使することができます。しかし、近親者の固有の慰謝料として、妹が独立して慰謝料を請求できるかどうかは、特段の事情がある場合には認められるケースもあるようですが、ケースとしては非常に稀です。被害者である兄が、事実上その妹を両親に代わって扶養をしていて、まさに親代わりであったような関係がないと難しいでしょう。保険会社との示談交渉ベースでは認められることはほとんどなく、裁判で争うよりほかに方法としてはないでしょう。

Q

内縁の妻は慰謝料を請求できないのでしょうか。

A

内縁の妻にも慰謝料請求を認めるのが時代の趨勢です。

内縁関係とは、夫婦としての実質は完全にそなわっており、ただ婚姻の届けだけが欠けているというような状態のものです。社会的には内縁関係においても、法律上の夫婦に準じた保護が施されるようになってきています。交通事故における裁判例でも、内縁の夫が交通事故により死亡した場合、内縁の妻に慰謝料を認めています。

重婚的内縁関係(他に、婚姻関係が実質上完全に破綻した戸籍上の妻がいる)の場合でも、内縁の妻に慰謝料を認めているケースも裁判例では散見されます。ただし、単なる浮気のような場合や、いわゆる妾の関係の場合には、このような法的保護は及ばないものです。

Q

大切にしていた愛車が交通事故で破損してしまいました。精神的苦痛に対して慰謝料を請求できないものでしょうか。

A

物損事故では、慰謝料が認められることは、まずありません。

物損事故などで自動車が破損した場合には、いかに大切にしていた愛車であっても、原則、慰謝料などの精神的苦痛に対する損害は認められません。自動車の破損については修理をおこなうことで復旧が可能ですし、もし全損ということになったとしても、同型式、同年式の代替車両の購入が可能だからです。物損事故の場合には、人身事故の場合とは異なり、法的に評価を受けるほどの精神的な苦痛を受けていないとの考え方からでしょう。裁判例でもほとんど認められていません。

非常に珍しい自動車で世界に二つとないもので修理が技術上不可能になってしまったような場合であれば、裁判例でもまれに認めているケースもあります。しかし、このようなケース自体が珍しいものですから、ほとんどのケースでは裁判に持ち込んでも不可能でしょう。

損害賠償は誰が誰に請求できるの?(トラブルの実際)

Q

加害者が自動車保険に加入していませんでした。賠償はしてもらえるのでしょうか。

A

もちろん賠償の義務はありますが、十分な賠償金額を支払ってもらうのは、現実的には難しいようです。

自賠責を含めて、保険の加入、未加入については、賠償義務とはなんら関係がありません。従って、保険に加入していない加害者であっても、当然賠償の義務はあります。しかし、問題になるのは、果たして賠償金をきちんと払ってもらえるのか、という問題です。このことは、示談交渉の段階や、調停、訴訟についても同様のことがいえます。「ないところからは取れない」という問題です。

加害者が自賠責保険にすら加入していなかったような場合には、「政府の補償事業」というものを受けることができます。これは文字通り政府がおこなう補償制度であるため、自賠責保険とは違い種々の制約があります。たとえば、治療に際しては必ず社会保険を使用することになっていたり、自賠責保険ではおこなわれない過失相殺の方法が取られたりします。受付の窓口は国内の損害保険の会社となります。

自賠責保険のみ加入の加害者の場合には、自賠責保険の被害者請求をおこなうことができます。手続きに関しては、加害者が加入している損害保険会社に相談するとよいでしょう。自賠責保険の特徴は、支払いの限度額が定められていること(たとえば傷害事故では限度120万円など)、請求権の時効が2年であることなどがあげられます。

ただ、これらの補償では到底不足するような場合に、これらを超えた賠償金額を確保するのは現実問題として難しい面があります。加害者にめぼしい財産、資産があるようであれば、訴訟を起こして賠償金額を確定させ、民事執行手続きで差し押さえをすることも有用でしょうが、往々にしてそのような無保険の加害者はめぼしい財産、資産を所持していないことが多いでしょう。

もしもの場合に備えて、自分の方で保険(人身傷害補償タイプの自動車保険)を準備しておく必要もあるのでしょう

Q

加害車両が運送会社でした。運転手の賠償能力がほとんどありません。会社に責任は問えないのでしょうか。

A

運送会社にも責任を追及できます。

(1) 民法に基づく不法行為責任(709条)
(2) 自賠法に基づく運行供用者責任

の2つがあります。

ところが、この設問のように、事故を起こした自動車が運送会社に属する車両でありかつ業務中である場合には、運転者のほかに使用者である運送会社に

(3) 民法に基づく使用者責任(民法715条)
(4) 自賠法に基づく運行供用者責任

を問うことができます。

この場合には、運送会社に・・の責任を、加害運転者自身には重ねて・の自賠法の責任を追及はせずに、(1) の民法709条の直接の不法行為者としての責任を追及することになります。

ただ、これは直接の加害運転者と使用者である会社が、連帯して支払い責任を負うということであり、二重に支払を受けることができるものではありません。

Q

私の車が盗難され、その車で事故を起こされました。私に責任は?

A

原則として、事故を起こした運転者だけが責任を負います。

盗難車両で事故が発生した場合、加害者である、いわゆる泥棒運転者に民法709条の不法行為責任を根拠に損害賠償責任が発生します。泥棒運転者の場合には、その加害自動車(盗難車両)の自賠責保険も任意自動車保険も、保険金の支払いの対象にはならないからです。このことは、その車を盗難された人も、ある意味では被害者であることを考えれば想像がつくことと思います。

しかし、盗難された車両に、保管上の落ち度があったような場合、たとえばエンジンをかけたまま人通りの多い路上に長時間放置していたというような、盗まれたことに明らかに保管上のミスがあり、しかも盗難から事故発生までの時間が接近していれば、その車の所有者も責任を追及される場合もあります。そうなればその自賠責保険も任意自動車保険も支払いの対象となります。

ただ、その盗難状況から事故発生までの時間的接近度合い、所有者の保管上の責任追及の可否、盗難発生と交通事故発生との相当因果関係などは一概には推し量れません。個々のケースで具体的に検証して裁判などで争ってゆくことになるでしょう。

Q

加害者は未成年の学生で賠償能力がありません。両親に損害賠償請求できるのでしょうか。

A

未成年でも経済的に自立していれば、両親には責任を問えません。

未成年者が直接の加害者であれば、第一義的にはその未成年者が民法上の不法行為責任を負います。しかし、未成年者の年齢にもよりますが、民法712条の規定により未成年者自身の責任も免責されることがあります。その場合には民法714条が責任無能力者の監督義務者の責任を規定しています。法定の監督義務者とは未成年者の場合には親権者が通常あたるでしょう。

また「監督義務者の義務違反と未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認め得るときは監督義務者につき民法709条の不法行為責任が発生する」との最高裁判所の判例もあります。

いずれの考え方をとるにしても、加害者である未成年者の両親を相手取って損害賠償請求は可能になるものと思われます。

問題になるのは、加害者は未成年者ではあるけれども、責任能力が十分に備わっているような場合です。たとえば未成年者といえども18歳、19歳位になっており独立して働いてその収入で自動車を購入していたような場合には、その親権者に監督義務者の責任の追及をすることは難しいと言わざるを得ません。

自動車窃盗を繰り返しおこなっていた、無免許運転を繰り返していた、その他の非行の事実が存在するのに、それをとめずに放置していたような事実がなければ監督義務者の責任不十分とはいえないでしょう。その意味では、責任能力の備わっている未成年者の交通事故の場合には、その両親への請求は難しいと言わざるを得ないでしょう。

Q

2台の車が事故を起こして歩行者が巻き添えになり死亡しました。損害賠償の請求はどちらにすればよいのでしょうか。

A

どちらに請求しても構いません。

2台の車の事故が、いずれか1台の一方的な責任によるものでなければ、どちらの車に損害賠償請求をしても構いません。たとえば、A車の過失が20%、B車の過失が80%であれば、人情としてB車に賠償請求を行おうと考える人が多いでしょう。しかしB車に賠償資力がないケース(自動車保険の加入がないなど)も考えられます。そのような場合には、もう一方の加害者であるA車に対して損害のすべてを請求しても構わないのです。法律的には、A車とB車は連帯してその賠償義務を負うことになります(民法719条)。A車が賠償金の全額を支払った場合には、後にその責任部分をB車に請求することになります。被害者としては、まず支払い資力のありそうな方に請求すればいいわけです。ただし、A車B車両方にそれぞれ請求して賠償金を二重に受け取ることはできないということは、間違いのないように。

Q

作業中のクレーン車が倒れてきて事故に遭いました。どのような責任追及ができるのでしょうか。

A

クレーンの作業者、その使用者たる会社が責任を負い、自賠法上の責任追及も可能です。

クレーン作業自体に落ち度があることは容易に想像がつきそうですので、その作業者に民法709条の不法行為責任が発生することは間違いがなさそうです。また、クレーン作業ということですので、その作業の使用者たる会社も責任を負う(民法715条)ことも問題はないでしょう。

あとはクレーン車といえども自動車ですので、自賠法上の責任は追及できないかが問題となるでしょう。この点については、自賠法上の運行の解釈によってきますが、一般的にはその自動車(今回はクレーン車)の正規の構造装置の用法に従って用いられていること、という解釈になりますので、恐らくこの場合には運行中にあたり、自賠法上の責任も負うということになります。

Q

加害者が死亡してしまいました。誰に賠償請求をしたら良いのでしょう。

A

相続人に賠償請求しますが、訴訟になるようなら弁護士に相談を。

事故の加害者が死亡してしまった場合でも、損害賠償の義務が消滅してしまうわけではありません。その加害者が持っていた資産や負債などと同様に、その賠償義務も相続人に相続されます。ですから加害者の相続人に対して請求をおこなうということになります。

加害者が自動車保険に加入していて、その保険会社が交渉の窓口になっているようでしたら、とくに心配をする必要はないでしょう。保険会社の側で相続人と打合せをおこなっていると考えられます。ただし話し合いでは示談がまとまらず、結局、裁判などで争うようになる場合には、訴訟の相手方は通常は保険会社ではなく相続人になります。その場合には弁護士に一度相談をしてみてください。

Q

被害者が意識不明の植物状態です。誰の名前で請求すればよいのでしょう。

A

家庭裁判所に申し立てて、後見人が請求することになります。

交通事故の被害者が植物人間になってしまったような場合は、精神上の障害によって事理を弁識する能力(判断能力)を欠く状況にある者、として成年後見の制度を利用することになるでしょう。加害者側としても、被害者が、例えば後遺障害等級の1級3号にあたるなどして明らかに正常な判断能力を欠くような状態にあるときには、誰を相手に示談交渉をすればよいのか迷うことにもなります。

後見開始の審判は家庭裁判所に申し立てることになりますが、申し立てを行なうことができる人は、本人、配偶者、4親等以内の親族、検察官、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、補佐監督人、補助人、補助監督人です。

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